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第2回「本気で生きてるか? 愛するひとのため」

 皆様、お元気ですか。今年度から福井大学医学部白翁会のリレー・エッセイが始まることとなりました。開業医の先生、勤務医の先生、看護師の皆様の三つの流れでバトンを渡して行きたいと思います。まず、勤務医部門は副会長の私から始めさせていただきます。今後ともバトンが渡った皆様、よろしくお願いいたします。

「福井県済生会病院に赴任して」

 私は産婦人科医として気がつけば20年を経て、済生会病院での勤務も14年になりました。ベテランと呼ばれる域に達しましたが、まだまだ、四十路の青春、社会人大学院生として、学位取得にも挑戦しております。
 長女が今年10歳になりました。昨年4月より、長男も小学校へ入学しました。児童クラブ、児童館に大変お世話になっています。今までは帰宅すると、どちらかの両親が留守番をしてくれ、2人の子供に夕飯を食べさせてくれていました。最近は、2ヶ月毎は、家族4人になり、それでもなんとかやれるようになって来ました。パナソニックのビストロや食器洗浄乾燥機も大活躍です。忙しいときは、僕が残った仕事を片付けるために、病院に戻ります。以前は子供たちが寂しがるのがつらいところでしたが、前ほど、手がかからなくなってきました。みんな賢くなっています。
 ここまでなんとかこれたのは、紙谷先生、金嶋先生、細川先生、福野先生の寛容な気持ちのお蔭です。紙谷尚之先生は70歳になられても、元気に毎日変わらず、たくさんの患者さんを診ておられ、誰よりもたくさんの手術に入っておられます。金嶋光夫先生は主任部長の業務の傍ら、病気のお父さんを1年間、見守り、看取られました。1期生の細川久美子先生は、産婦人科医減員のなか当直回数を倍増して、頑張ってくださいました。2期生、福野直孝先生は、ここ10年、最も多く、当直をこなし、外来をされ、主治医としてほぼ全ての分娩に立会っておられます。さらに12期生、河野久美子先生には日直だけでなく当直もしてもらい、20期生、三屋和子先生にも当直に復帰してもらいました。みんな頑張っています。結婚された23期生、熊谷亜矢子先生をはじめ、後期研修をしてくれた若い先生にも感謝しています。

「女性医師の復職は本当に大変」

 振り返れば、そんな僕も長女が生まれた頃は、子育て、家事は妻、義母に丸投げでした。妻は産休のあと、医局の計らいで1年間、育児休業をいただくことができ、臨床を1年間、完全にお休みしてくれたのです。その後、彼女は、パートタイムで戻りたいと思ったようですが、「育児休業を取得したのだから、元の職場に常勤として戻るべき」と僕と義父が背中を押しました。今なら少しは、良かったのでしょうが、当時の大学病院の医局では育児休業後の復職の前例がありませんでした。当直の免除など配慮してもらったようですが、他の医師の不公平感を減らすために、妻は遠方の外勤や救急のコンサルテーションや学生さんのプラカンなどを受け持つことを申し出て、チーム内のバランスを取っていました。帰宅すれば、家事、育児で大変ですし、臨床現場でも合計2年、ブランクを埋めるのに苦労したようです。よく頑張ったと思います。子育て中の女性医師が「大学病院の医師」としての仕事を全うするのは大変困難があると思います。臨床、研究、学生(研修医)教育に時間をとられ、早朝から出勤し、帰宅は午後10時過ぎになることがしばしばでした。でも、好きだから続けていると信じて、それをサポートするくらいしかできませんでした。そのため、2人目の子供は1歳から保育園に預けることとし、両家の両親に交替で助けてもらう体制としました。長男が1歳の時、済生会病院の産婦人科医が9名となり、大変ながらも少し病院を離れられる時間を作ることができ、朝、夕の保育園の送り迎えを僕がするようになりました。

「子育てを楽しむべき」

 子育てにかかわるようになると、わかるようになるのですが、子供はまず、言うことをきいてくれませんでした。言葉がまだわからないのですから、当たり前です。朝、起こして、ご飯を食べさせ、パジャマから保育園の制服に着替えさせるのが一苦労でした。長男はトーマスの服が好きで、それを着て行きたがります。制服の上に、お気に入りの服を着せたり、その逆をしたり、機嫌を壊さない様に大変でした。長女は自分である程度してくれますが、長男は寝起きが悪ければ、車の中でおにぎりやリンゴを食べさせたりと、家を出発し保育園に着くまでが大仕事でした。今となれば、どなったり、怒ったりしてやらせる方が簡単なこともあるのでしょうが、結局は「急がば廻れ」で、子供の信頼感を勝ち取る(迎合することではなく)ことが大事なのだと気付きました。子供達もよく見ています。そして約束を覚えています。大人がいい加減なことを言ったり、したりすると、後で「約束を守ってない自分」を突き付けられます。僕はほとんど怒らないようにしています。もちろん、大事なこと、危険なことなどは注意しますが、大人の基準をすべて当てはめて、良し悪しを決めないようにしています。パパのお願いとして「喧嘩をしない(喧嘩は両方が悪いが、上のものが喧嘩にならないようにすることができる)」「できるだけ泣かない(泣かずにどうして欲しいか言えるようにする)」を伝えています。後はほとんど見守るだけです。時間がかかって、イライラすることもありますが、成るようにしか成らないと自分に言い聞かせています。言葉がわかってくるようになると良かれと思って注意したりしてしまいます。しかし、否定の言葉が増えると、その時は一見上手くいったように見えますが、お互いの信頼関係が育ちにくくなります。しつけは大事ですが、子育てで、完全な正解はないと思っています。子供たちがして欲しいと思っていることが大きく外れていないことであれば、瞬間、瞬間で考え、できる範囲でそれに合わせてやっていくことが大体合っている答えのような気がします。子どもたちといると、Eテレ(NHK教育テレビ)を見ることが多いです。一緒に、見ていて、印象に残った曲があります。ファンキー加藤の「まわせ!」という曲です。

「まわせ!」
                      作詞:ファンキー加藤

地球が回る速度は何キロメーター
置いてかれてるのは気のせいか
キリキリマイだよAny time
付いて行くだけでも精一杯
報われないむなしい足跡
それでも今日の悔し涙を
笑い声に変えるのはきっと
明日への小さな一歩

はやる気持ちで空回りでも無力じゃないぜ
風は起きるよ

まわせ まわせ 今世界を俺たちの力で
まわせ まわせ この願いを未来のはてまで
本気で生きてるか 愛する人のため
ほらその声をあげろ
ほらその声をあげろ
指先だけで ツイートするよりも
本当の声で叫んでいたいよ

踊れ 踊れ この世界はお前が立つステージだ
踊れ 踊れ その命が燃え尽きる日まで
人生は一度きり お前が主役だろ
ほら その声をあげろ
ほら その声をあげろ


人生の主役は自分です。子育てや家族を守ることも、本気でやれば、自分の中の葛藤や愚痴が減っていくような気がします。

「子育ては研修医教育にもプラス」

 「人は誰かを幸せにしたいと思ったときに、初めて幸せになれる!」という言葉を故、丸尾眞理子先生にご縁のある女医さんに教えていただきました。ここ数年、振り返ると、本気で生きてきました。テニス部のキャプテンの時以来です。大変だったと思います。大変なのですが、子育てを経験すると、大きな力が身についたと思います。そして自分の両親の有難さがわかるようになり、感謝の気持ちが湧いてきます。以前の自分は仕事に逃げ込んでいたのかもしれません。医者として必要とされていることに自己満足感がありましたし、育児休業中の妻の不安など理解できませんでした。女性医師として、子育ては大変やりがいがあることです。しかし現場から離れてしまうことや、先行きへの不安感があることに気付きませんでした。同じ経験とは言いませんが、自分の時間を割くことによって初めて、妻や同じ立場の女性医師の気持ちも理解できるようになりました。共感できると思いやりが生まれ、言葉かけやちょっとしたサポートが自然にできるようになります。妻はどう思っているかはわかりませんが。
 現在も、臨床現場を中心に学生さんや研修医の先生たちと係わらせてもらっています。10年前には「子育て」が研修医の教育にも当てはまることに気がつきませんでした。昔、自分が楽をするために後輩を教えていた時があります。その時は教えるというより、「伝達」だったのでしょう。「教育」は自分の子供にするように「見守る」しかないことに気付きました。自分より能力が高いかもしれない素材に、自分のやり方を押し付けて、七掛けの自分を作っても仕方がありません。プロ野球で2軍の打撃コーチのアドバイスを聞いて一流になった打者はいません。素材をつぶさずに伸ばせた場合に、活躍できる可能性があるのでしょう。「教育は共育」なんだと思います。永遠の上司、紙谷先生は、決して怒られない方です。治療の方針を型通りに決められることはありません。僕が迷って相談した場合にも、自分の考えを押し付けられずに、僕に話させて、思っていることを上手に出させます。出した考えを肯定し、それに対してベターなアドバイスを下さります。エビデンスやガイドラインも大事でしょうが、ひとりひとりの背景に基づいた治療方針を一緒に考えてくれる指導医のもとで働けていることが本当に幸せです。若い先生は、紙谷先生と手術に入りたがります。危ないところがない限り見守ってくれるからです。僕ではまだまだ力不足かもしれません。それでも一緒に冷や汗をかいていますが。紙谷先生のように生涯医者として、若い医師に慕われるような指導医にはなかなかなれませんが、医者の幸せは「これ」なんだろうなと最近、思い始めています。

「先生方、白翁会に力をお貸しください」

 本年度は、同窓会副会長、福井県医師会女性医師対策委員長に加え、福井県産婦人科連合の「みらい委員会」の仕事にも携わることになりました。天命、天職だと思って、この仕事にも「本気」で生きてみたいと思います。7月7日には、医学部同窓会白翁会主催の「くずりゅうサマーパーティー」が3期生の吉田教授の下、開催されました。産科婦人科学教室の皆様の力で、学生さんだけでなく卒業生である、研修医や我々が楽しめる会になりました。母校の素晴らしさ、「福井」の素晴らしさが伝わってくれればと思います。福井に残って初期研修を行い、専門研修を母校の医局にスムーズに入局できる流れを作れればと思います。
 最後に、ご存知の方も多いと思いますが、来年度より同窓会の運営に、大きな変革が行われる予定です。「一般社団法人化」に向けて、定款の見直しや、理事、代議員の選出など、問題は山積しております。今まで、同窓会の運営にはボランティアの精神で携わってきました。内にいても、疑問が無いわけではなく、その都度、「耳の痛い言葉を」発言していますが、1期生の先生方の「熱い思い」にはかないません。本当の意味での民主的な運営にはまだまだです。そのためには、お忙しいと思いますが、2期生以下で、研究など、一仕事やり遂げた先生方に、同窓会運営の参画を是非お願いしたいと思います。そろそろ、必死で頑張ってきた先生のバトンを受け継いでいただく方が、必要とされています。優秀な部下がいる先生方、子育ての手が離れた先生方、よろしくお願いいたします。暇ができた、65歳を過ぎてからより、やるなら、経験値が高く、頭がシャープな今だと思います。



(次回は、9月下旬に野智早(福井大学附属病院・がん診療推進センター)さんにお願い致します。)

11期生 福井県済生会病院 里見裕之

   
 
     

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